読書しているかは話せば分かる

面接を受けに来た学生が、日常的に読書をする習慣があるか否かは、話をすればすぐに分かります。そして、当然ですが、社会人は読書の習慣がある学生に対してより良い印象を持ちます。

大学生協が、2013年の10~11月 に 8,930人の大学生を対象に調査をしたところ、学生の1日の平均読書時間は26.9分(文系32.0分・理系24.2分)でした。同じ方法で調査している04年以降最も短く、本を全く読まない学生も40.5%と、初めて4割を超えました。実に5人に2人です。

学生の読書離れの背景としては、スマホの普及が大きいとのことです。

読書を趣味とするべき3つの効用

さて、ここでは読書の効用について考えてみたいと思います。

読書の効用は3点あります。読書の機会が増やせるよう習慣化・趣味と出来ると以下のような知的効用があるでしょう。

まず、「知識が増える」ことです。現代は、ネットで調べると様々なことが分かりますから、知識を増やすために本を読む効用は、ネットのない時代に比べたら相対的に減っている気がします。しかし、ネットの情報は、意外に詳しい内容まで掲載されていないことが多いように思います。また、物事を体系的に理解するためには、ネットの情報だけでは事足りません。こうした点を考えると「知識を増やす」ための方法として、読書にはまだまだネットにはない強みがあるのです。

次に、本を読むことにより、「いろんな世界を見ることができる」ことも読書の効用だと考えます。最近テレビで見ましたが、ある地方の本屋さんが、読書履歴と一万円を送ると、店主がその人がまだ読んでいない本の中から、読んだらその人の世界が広がって面白いと思ってもらえそうな本を一万円分送ってくれるというサービスをやっているそうです。

このサービスが好評で、口コミでじわじわと利用者が増えているそうです。自分の世界を広げるという効用を本が荷っているという典型的な事例だと、テレビを見たときに思いました。実際、自分1人の世界だと物事を捉える視点が狭まってしまいがちですが、本を読むことにより様々な人の考えに触れることが出来るので、凝り固まった頭になるのを回避することができると思います。

最後に、「考えるきっかけが増える」ことも読書の効用だと考えています。自分の突き詰めたいテーマについて本を読むと自分では考えてもいなかった視点が見つかります。また、作者や著者が何を伝えたいのかを考えることによって、自分の思考が深まります。

読書家と経営者

別の視点で、「読書」に関する私の経験を紹介します。私は、リクルート勤務時代に300人を超える中堅・ベンチャー企業の経営者と、採用や研修の仕事で、対面で何回もお会いしてきました。

その中には「この人は凄い!」と心底感心させられる経営者も少なくありませんでした。経歴や生まれ育った環境が異なる彼らに、唯一共通していたのが全員が大変な読書家だということでした。

彼らは、誰かに言われて本を読んでいる訳ではありません。彼らが本を手に取る理由は、本から得られることがそれだけ多いと経験上知っているからにほかなりません。

皆さんは、アルバイト情報を掲載するウェブサイト 『ジョブセンス』を運営しているリブセンスという会社を聞いたことがありますか?この会社は東証一部に上場しているのですが、実は上場当時、創業社長である村上太一さんは、まだ25歳以下一ヶ月でした。これは、東証1部上場企業の史上最年少の記録です。

実はここだけの話、この村上社長とは、まだ彼が早稲田大学のインキュベーションルームにいた時代に何回かお会いしたことがあります。当時から、だたものではないと思っていたのですが、彼を心底「凄い」と思ったのは、帰りがけに「廣瀬さんが最近読まれた面白い本を紹介して下さい」と言われた瞬間でした。

その時、正直「この青年は化けるかも?」と思ったので、彼が後に最年少東証一部上場記録を作ったときは、逆に「さもありなん」と思ったものです。

少し横にそれましたが、このように、「読書」は計り知れない力を与えてくれるのです。実際に、世界のビジネスを牽引している経営者の多くも読書家です。

また、採用の選考の過程で、皆さんが読書から吸収した「教養」を面接官が察知したり、「感銘を受けた本は、どんなものですか?」と訊かれることもあります。

読書に関しては、最後に丸谷才一さんの「文章読本」の一節を紹介します。

「人は好んで才能を云々したがるけど、個人の才能は実のところ伝統を学ぶ学び方の才能にほかならない。」