これから、5回にわたり、就活を勝ち抜くために不可欠な要素「α」について説明していきます。「α」というのは、「人間性」を高める上で役立つものでもあり、かつ高ければ高い程企業からいい評価を受けられる基準(項目)です。

「+α」のⅠ:「 大学・大学院名」

企業が+「α」の最初に「大学・大学院名」に持ってきたのは、多くの学生が、自分の通っている大学や大学院の名前を必要以上に気にしているからです。実際は、企業が採用の合否を決める要素としては、「大学・大学院名」はそれ程重要ではないにも関わらずにです。

私が、就活コーチングをしている学生さんとの間で、在校大学名がしばしば話題に登ります。例えば、「私の大学は東大、東工大、一橋、早慶などの大学ではないので、人気企業への入社は難しいのでしょうか?」と心配する人もいれば、当の偏差値上位大学に通っている学生からも「私は人気企業に入社できるのでしょうか?」と聞かれることがあります。つまり、偏差値上位校に通っている人も、そうでない人も、「自分は希望しているレベルの企業に入れるのでしょうか?」という質問をしてくるのです。

ただ、両者の質問の趣旨は若干異なっています。偏差値上位校の学生でない前者は、大学・大学院名だけで既に人気企業への入社が制限されているのではないかと感じているのに対して、後者は、自分の実力故に人気企業へ入社できるかを気にしているのです。

「高学歴」は就活に影響があるか?

私は、この種の質問や疑問を訊かれた時には、既に公表されているインタビュー記事や客観的なデータを紹介するようにしています。

例えば、人気企業にはどのくらいのプレエントリーがあって、実際どれだけエントリーされているか調べてみました。

まず、「多くの学生が入社したいと考える知名度が高く、入社難易度が高いブランド企業200社」を人気企業と定義します。そのうちの17社の人事担当者がインタビューに応えているのを見つけました。各インタビューに公表されていた数字をまとめると、、

プレエントリー数の実際の数字を公表していた会社のうち、最大は80,000人、本エントリーでは20,000人でした。ある総合商社では、プレエントリー数が30,000人、本エントリー数が13,000人でした。

これらの数字から、人気企業の本エントリー数はおよそ10,000人。採用者は100人くらいなので、倍率は100倍と大雑把に見積もることができます。

倍率100倍です!100人に一人しか受からないのです!この数字を見れば、いわゆる人気企業への入社が、大学受験の比ではなく難しいことは、誰の目にも明らかでしょう。

どんな学生も不安なってしまうのも無理のないことなのです。

学歴フィルタ:偏差値上位大学:「高学歴」とは

さて、さきほどから「偏差値上位大学」という曖昧な言葉を使っていますが、具体的には東大をはじめとした旧帝大と一橋大、東工大、早稲田・慶應の11大学を指しています。大学のランクというのは、いろいろな尺度があるので、「偏差値上位校」をこれら11大学に限定することには異論があるかもしれませんが、ここでは企業が新卒学生を熱心に採用したがっているという尺度でこれらの学校を「偏差値上位校」としています。

さて、これら偏差値上位校では、年間6万人強が卒業します。(図表●参照)そのうち民間企業就職率を50%とすると約30,000名が民間企業に就職する計算になります。これは、全民間企業就職希望者423,000人の約7%です。

一方、リクルートワークス研究所の調査によると、従業員5,000人以上企業の求人数は45,800人です。(第31回リクルートワークス 大卒求人倍率調査)

学部 修士 合計 民間企業への就職希望率50%
1学年在籍 1学年在籍
旧帝大(7大学) 22,000 12,500 34,500
一橋大 1,000 350 1,350
東京工業大 1,000 650 1,650
早稲田大 11,000 4,500 15,500
慶應義塾大 7,000 1,500 8,500
合計 42,000 19,500 61,500 30,750

学歴と履歴書・エントリーの関係

これらのデータから計算すると、従業員数5,000人以上の企業が仮に偏差値上位校の民間就職希望者の全てを採用したとしても、採用目標の65%しか採用できないことになります。つまり残りの1/3の、上記偏差値上位校以外から採用しないと自社の採用目標は充足できないことなります。

実際に、2014年4月にあるメガバンクに入社した先輩に話しを聞いたところ、採用者の大学別出身校の内訳は偏差値上位校で5割、残り5割はその他の大学の学生でした。同じく総合商社に内定した人に話しを聞いたところでは、偏差値上位校で2/3、その他の大学で1/3でした。

これらの数字データからは、人気企業では、偏差値上位の大学から多くの学生を採用しているものの、それ以外の大学からも一定数の学生を採用しており、その数も一般に学生が考えている以上に多いことが分かります。

学歴フィルタと仕事力

再三述べていますが、企業が求めているのは「入社後に成果を上げる人材」です。正直言って、仕事ができる・できないと、出身大学はほとんど何も関係がありません。

仕事をする能力は、これまでに紹介した「社会人基礎力」です。この能力と大学入学時に問われる学力とは、重なるところが全くないわけではありませんが、ほとんど別の能力です。ましてや、「好感度」の元となる「表現力」は学力とは関係ありません。

さて、毎年の採用人数が数名~20名程度と少ないけれども、多くの学生が就職を希望する人気企業では、あまり多くの学生から応募して貰う必要がないため、偏差値上位校+数校に絞り込んで採用活動をしていることも、実態としてありそうです。(どの企業が特定大学・大学院の学生しか対象としていないかは、人事部だけの内部秘密ですから実態はわかりません。)

また、2016年卒の学生の採用に際しては、企業の採用広報と選考時期が後倒しになったため、リクルーターを増員・復活させる企業が増加します。リクルーターは基本母校の学生に対してアプローチしてくるので、人気企業に先輩が多く勤めている偏差値上位の大学の学生には、経団連倫理憲章で決めた8月1日以前にアプローチが開始される可能性が大いにあります。そうなれば、偏差値上位校の学生が早くから企業の選考テーブルに着ける可能性が高くなります。

しかし、早くからリクルーターと接触できたとしても、合格のジャッジがされるかどうかは、全くの別問題なのでぬか喜びしないことが重要です。

あくまでも「企業は自社で成果を上げられる人」を求めていることを再度認識していただきたいと思います。