人間性の4タイプ
前回紹介させていただいた速水先生によると、人は以下の4タイプに分けられます。 この図は、縦軸に「自己肯定感」を、横軸に「他者軽視感」を記したものです。 自己肯定感が高く他者軽視感が低い左上が「自尊型」、 自己肯定感・他者軽視感共に低い左下が「委縮型」、 自己肯定感・他者軽視感共に高い右上が「全能型」、 自己肯定感が低く、他者軽視感が高い右下が「仮想型」と言われます。 「仮想型」は、わかりやすく言えば、自分も他者も肯定できない人のことです。
速水敏彦教授によ「人間性」タイプの解説
速水敏彦教授は、この仮想型タイプに関連して著書でこのようなことを述べられています。長くなりますが、大切なことですので、先生の著書から引用します。
『本来、自己有能感と言えば、自分にも他人にも満足している「自尊型」がイメージされがちですが、そうではない形での有能感を持つ人が増え、まさに自分にも他人にも不満な「仮想型」こそ、本来の有能感の低さを他人を軽視することで、仮想的に有能感を生み出す現代的傾向として、私は注目しているのです。 「人間には、もともと何かを達成すること自体を喜び、それを目指して頑張ろうとする気持ち=「達成動機」があります。達成動機を高めるために不可欠な「自信を持つ」ということは、人間関係の中で、他人に評価される中で生まれてきます。自分の評価軸だけでは、決して自信というものは生まれません。日本の若者には、この自信が薄れてきているように思われます。この自信のなさを自分以外の他人を軽視することでカバーし、世の中を渡って行こうとする若者が増えてきている感じがします。私は、そういう他人軽視の感覚を「仮想的有能感」と呼んでいます。この仮想的有能感では、行動や考えのベースが他者との比較になります。従って、学力や思考力を育てるためにも、よいはずがありません。 この「仮想型」の学習に対する動機づけは、まさに他人からの矯正、指示されて行動する「外的動機づけ」や失敗すると恥ずかしいので承認されるために行動する「取入れ的動機づけ」が極端に強く、他方、自分にとって大切なことだからするという「同一化的動機づけ」や、やること自体が楽しいから行動する「内発的動機づけ」が低かったのです。この4種類の動機づけはうしろに行けば行くほど自律的になるのですが、「仮想型」の人はむしろ逆さの他律的動機づけに支配されていることになります。中略 また、仮想的有能感の高い人は、学習量志向も低いのです。可能な限り努力はしないで済む行動を選択する方向性が見出されました』
速水先生には直接お目にかかり、取材もさせていただきました。その際、4タイプにどういう人物が当てはまるか、わかりやすく示す身近な例を教えていただきました。それは、漫画「ドラえもん」に登場する4人のキャラクターです。 速水先生からは、また、ショッキングな調査データを教えていただきましたので、紹介します。
世界と日本の大学生の「人間性」タイプの比較
これは、速水先生が、2007年に各国の大学生を対象に、それぞれの国でのタイプ別の割合を調べた調査の結果です。 日本では、「委縮型」に分類される割合が34.1%と最も高く、実に3人に一人を超えています。「萎縮型」がこれだけ多いのは、この調査の対象になった国では、日本だけで他国の割合大きく引き離しています。このデータは、日本に「いい人だけど、自分に自信のない」(自己肯定感、他者軽視感共に低い)学生がいかに多いかを如実に物語っているといえます。 また、この調査の結果では、「仮想型」(自己肯定感が低く、他者軽視感が高い)学生も3人に1人の確率です。合せると、「自己肯定感」の低い学生は、3人に2人となり、いかに他国の学生に比べて、日本の学生が「自信がない人」が多いかが分かります。 併せて、台湾人が日本人と同じように「自己肯定感」が低い人が多いことや、自己肯定感、他者軽視感共に高い「全能型」が、北米人や韓国人に多いことなどもこのデータから分かります。この辺は、なんとなく感じていた日常感覚と近いものがあるのではないかと私自身は思います。 学生世代で、このようなに違っているのであれば、当然、社会人世代も日本人は自分に自信がもてない人が多いと考えるのが妥当です。 今や、国際社会の中で、日本企業が世界の企業と熾烈な競争を行っていますが、ライバルとなる欧米人や韓国人に対峙して、堂々と渡り合っていけるのか?この調査の結果を見て、とても不安になった次第です。
企業が採用したい「人間性」のタイプ
調査結果では、日本の学生のうち「自尊型」はわずか19%しかいません。 つまり、5人に1人の割合です。企業が採用したいと考えているのは、まさにこの「自尊型」人間です。仮に、今自分自身は「自尊型」でないという自己分析の結果が出たとしても、意識して「自尊型」になるように努めることが大切です。これが、採用場面で応募企業の人事からいい評価を獲得する上で、また実際に入社後に企業で仕事をする上でとても大切なことだと思います。