「手」も面接の際に、面接官に対して話しをわかりやすく伝えたり、話しの内容を補完したり、好印象を持ってもらうためには欠かせない、大切な要素です。

就活本の多くには、手は両ひざの上に軽く握りこぶしをつくって置いておくものだと書かれているために、それが正しいと思っている人が多いと思います、確かに面接の最初では、その姿勢でいいのですが、話しを始めたら、手を意図的に使うことが大切です。

IOC総会・オリンピックの例

2013年9月7日には、ブエノスアイレスでIOC総会が開催され、最終的に東京オリンピックの招致が決まりました。そして、その席上プレゼンテーターとして登場した滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」のワンフレーズは多くの皆さんに、強い印象を与えました。

それでは、何故、あれ程強い印象が残ったのかと言えば、勿論、滝川さんの笑顔にもありますが、それ以上に「手の動き」の効果が大きかったのだと思います。

「お・も・て・な・し」と手指を揃えて上に向け、ゆっくりとあたかも種を植えるかのような手の動きをした後に、「し」の箇所では手を広げ、花が咲いたようなジェスチャーとその後の「合掌」が日本らしさを体現しており、そのしぐさが、多くの観衆の心を捉えたからです。

もし、あの時、滝川さんがスピーチテーブルの下に手を置いて同じことを話していたとしたらどうでしょうか?あれ程まで、強烈にいつまでも多くの人々の印象に残ったものとは決してならなかったはずです。

「手」の持つメッセージ性

あのプレゼンテーションをコーチしたマーティン・ニューマン氏の「パーソナル インパクト」という著書にはこのような1節があります。

『人間の手はというものはとても器用で、いろんな表現が出来ます。歴史を辿れば、言語を獲得する以前から、自分の気持ちや伝えたいことを表現するために使われるようになり、やがていろんな道具を使うためにも手が活用されるようになりました。「手を使わないで話す」ことは、「もっとも役に立つ道具を使わずに話す」ということに等しいのです。』

また同著ではこのような一節もあります。「人が自然に話している様子を見ていると、人間の手はオーケストラの指揮者の指揮棒と同じように動いていることにお気づきでしょうか。声と手はシンクロして動くのです。まったく手を使わずに話した場合、話にエネルギーを込めたり、表現に色をつけることが非常に難しくなるのです。』

手は、話のトーンによって自然に動くこともありますが、話しを強調したい時には、意図的に使うことが大切です。実際に、手の平を上にして、軽く開いてみて下さい。オープンな感じが伝わってきます。逆に手の平を下に向ければ、クローズドな印象ですし、強い意志を表現できます。

テレビでドラマやバラエティー番組を見る時には、役者や芸人さんがどんな手の動かし方をしているかに注目して見てみると、自分の手の表現のバリエーションが深まります。私が明石家さんまさんが面白いと思う理由の1つはここにあります。彼は、番組出演中、笑う際には、手をたたいたり顔に手に寄せたり、様々な手の動かし方をしています。

実際の面接の場面での表現

面接の場面でも、「私は、以下3つのことに力を入れてきました」と言う際には、指を三本伸ばして見せたり、「バイトの売り上げが、20パーセントもアップしました」という際には、指で2を表現すると相手に上がったことを強調して伝えることができます。

また、「1年の時には、先輩の指示に従って行動しましたが、2年の時には、チームの2つの問題を解決しまた。そして、3年になって、チームを引っ張る立場になった時には、新た3つのことを成し遂げました。」という話をする時には、両手を狭めたり、広げたり、もしくは上下に動かしたりすることで、相手に分かりやすく、説得力を持たせて伝えることが可能になります。

最後に先ほど紹介したニューマン氏のあるエピソードを紹介します。

「石原新太郎氏と都知事時代にプレゼンテーションのセッションをしていた時のことです。彼は、3、4回セッションをした時に、『スピーチに関してはもう十分理解したから、次はジェスチャーのことをやりたい』と彼に申し出た」そうです。

さすがに強烈なリーダーシップを発揮し、政治の舞台で長年活躍をし続けている人だけあって、手を意図的に使う重要性をよく理解されているのだと感心させられました。