
ここでは「仕事とは何か?」を考える上で「目標」と同様に大切なことを考えてみます。それは、「目標」と「目的」の違いを明確に区別し、両方の達成を目指すことです。
下図を見てください。これは、目標と目的を図示したものです。
仕事における目標とは
目標というのは、目指す「標」(しるし) と書きます。つまり「ある一定の期間において、達成できたか否かを明確にするもの」です。
会社の場合なら、1年に一度決算をしますから、目標は、1年間に上げた売上額と利益額です。上場企業の場合には、株主総会で株主に今期の達成率を報告するのと同時に、来期に目指す数字を発表しますが、これが目標です。
これをブレイクダウンして、会社の事業部または部や課に、同じように1年間の売上・利益目標が設定されるのです。(部署によっては、定性目標のみの場合もあります。)
学生さんの場合なら、例えば3年次にはいくつのAをとるとか、何かの大会やコンクールで入賞するとか、いずれにしても達成したのか否か、結果がはっきりするものが目標です。
仕事における目的とは
一方、目的は、目指す「的」(まと)です。つまり「永遠に追い求めるもの」で、会社であれば、「企業理念」や「ミッション」がこれに当ります。個人でいえば、「幸せな家庭を築く」や「人の役に立つ」「自己の成長」などが目的となり、就活に当てはめると、「志望理由」や「座右の銘」が目的になります。
明確な「目的」を持つと、モチベーションを高めることができます。人は、自分の今やっていることに「意義」や「意味」を見出すと、モチベーションが高まるからです。
例えば私は企業研修で、こんな話しをよくします。
道を歩いているとレンガを積んでいる老人に出会いました。
「おじいさん、何をしているんですか?」と尋ねると、おじいさんはこう言いました。「見ればわかるだろ。レンガを積んでいるんだ」。
また、少し歩いて行くと、また、レンガを積んでいる老人に出会いました。
「おじいさん、何をしているんですか?」と尋ねると、今度のおじいさんは、こう言いました。「教会を作っているんです。みんなが日曜日に集まって、神様にお祈りする場所をね。」
最初に会ったおじいさんは、疲れた表情で、目がうつろでしたが、後から会ったおじいさんは、楽しそうに目を輝かせていました。
同じレンガを積むという行為をしているのにも関わらず、この違いは、自分の行動の目的を意識しているかいないかの差です。
つまり、人がイキイキと生きていくためには、「目的」を持つこと欠かせないのです。
「目標」と「目的」をセットで考えよう
人には「達成動機」がありますから、具体的な目標を達成すると「ヤッター!」とガッツポーズが出ます。学生の皆さんも、大学受験で目指す大学の合格発表を目にした時には、体中で喜びを味わった人が多いはずです。中には喜びのあまり飛び上がった人もいるでしょう。他にも、今までの生活の中で、試合に勝ったり、コンクールで入賞したら、飛び上がる程嬉しかったという経験したことがある人もいるでしょう。
一方、目的だけを追求している人は、目の前のことが疎かになりがちになるため、「目標達成」の喜びが味わえません。ガッツポーズが出ないのです。
また、目標だけを追いかけている人は、意義が見出せないと仮に達成できたとしても、それはひと時の喜びでしかありません。達成できなかった場合には、くやしさや疲れが出てきます。
つまり、仕事をする上では、「目標」と「目的」の両方がセットになっていることが重要で、常に自転車の両輪のように意識することが大切なのです。
自転車は、ほとんどの人が乗れますが、一輪車になったらどうでしょうか?不安定ですね。仕事でも同じです。
自己分析を行う上では、是非とも一度、自分の学生時代の「目標」と「目的」が何であったのか?について考えていただくことを強くお勧めします。