目標を達成する力=仕事の能力=「仕事力」

今回は、「目標を達成する力」=「仕事の能力」について考えてみます。

企業の選考では、実際に目標を達成する能力があるかどうかが、一番に問われます。

例えば、何かの大会で勝つためには、いくら勝ちたいと強く願っても、実力がなければ勝てません。また、何かのコンクールに入賞するには、技術がなければ、いくら誰よりもその賞を欲しいという気持ちがあって無理です。

仕事でも同じです。いくら気持ちでは「頑張ろう」と思っていても、能力が足りなければ、会社が期待するような結果を出すことはできません。

会社は、結果を出して初めて評価されるところなので、「能力」のない人材は不要なのです。

社会人基礎力

私は、独立してから数年間、リンクアンドモチベーション社で研修講師を務める傍ら、日本を代表する企業のアセスメント(能力評価)の仕事をしてきました。こうした社会人の能力を評価する仕事の経験を踏まえ、就活コーチを始めてからの半年間、企業が学生の能力を評価するには、どんな項目を基準とするのがふさわしいのかを、模索し続けました。

何度も自分なりに評価基準を作り、周りの研修講師仲間にも相談するという日々を送り、ついに見つけたのが、経産省がまとめ上げた「社会人基礎力」という能力基準でした。

最初にみた時は、正直「簡単すぎる」と思いましたが、その内容を深く吟味するに連れ、「正に、これがいい。いや、これでいい。深い。」という想いに変わり、以来、「社会人基礎力」が私がコーチングを行う際の基準になりました。

仕事をする力(やれること)は、企業が候補者の合格・不合格を決める際の判定基準となる大事な力です。

では、どんな力が会社で仕事をする上で必要となるのか?その問に対する答えを求めて、2000年代初頭から先進国を中心に、「企業や社会で求められる力」は何かを研究しよういう試みが始まりました。

そのような世界的な動きを受けて、日本でも2006年2月に、経産省が産学の有識者による委員会を設け、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な力」としてまとめ上げたのが、「社会人基礎力」です。

職場や地域で活躍する上で必要となる力

ここからは、社会人基礎力を含めた「職場や地域で活躍する上で必要となる力」について考えてみます。

shakiimage

(参照:社会人基礎力(METI/経済産業省

職場で活躍するために必要となる力の基本は、おもいやり、公共心、倫理観といった「人間性や基本的な生活習慣」です。

もちろん読み書き、計算ほか基本的なITスキルなどの「基礎学力」、また仕事に必要な「専門知識」も仕事をする上では不可欠です。

それらに加えて、必要となるのが「社会人基礎力」です。しかも、「社会人基礎力」はいま説明した、職場で活躍する上で必要となる力の中核なのです。

上図を見てください。ベースにある「人間性や基本的な生活習慣」、社会人基礎力の左右にある「基礎学力」と「専門知識」の輪が「社会人基礎力」と重なる部分があり、かつ矢印で繋がっていることに注目してください。

「人間性や基本的な生活習慣」「基礎学力」「専門知識」は、「社会人基礎力」と相互に影響しあいながら、循環的に向上することがこの図では表現されています。

 チームで働く力

「社会人基礎力」の特徴の1つは、個人としての能力に加えて、「チームで働く力」が柱になっていることです。そのための前提として、人に迷惑をかけてはならないので規律力が重要とされています

規律力は「基本的な生活習慣」と切っても切れない関係です。また、人とうまくコミュニケートする力の向上は、自分自身の価値観や在り方を問うことに繋がり、それは人間性の向上を意味します。

チームで働く上では基本的なITスキルが欠けると支障が生じますから、自分自身のITスキルを向上させようとする意欲にも繋がります。

このように「社会人基礎力」は、職場で仕事をする上で欠くことのできない、中核の力と位置づけられるのです。

新卒採用に専門知識は不要?

新卒の採用選考では「専門知識」の有無については、修士卒までは、限定的な専門職として応募しない限り問われません。

例え研究開発職に応募したとしても、研究開発の深さや能力が問われるだけで、専門知識が問われているわけではありません。

日本企業は、「専門知識」は企業へ入社した後に養っていけばいいと考えており、また、専門知識を重視した採用は、中途採用者に期待しているからです。

従って、新卒生の採用選考時に問われるのは、ベースとしての「人間性」(主として心の領域)と、基礎学力と社会人基礎力です。

基礎学力はSPIを中心とした各種テストで判定されますから、面接時に問われるのは「人間性」と「社会人基礎力」です。

そして、人間性も「チームで働く力」とは深い関係があります。何故なら、人は人によって触発され磨かれるからです。

このように考えると結局のところ、仕事をする力は「社会人基礎力」であるという結論に達します。